生物の中では人間のみが「自由」であり、人間は自由から逃れることができない。
- 作者: 小林昌平
- 出版社/メーカー: 文響社
- 発売日: 2018/04/27
- メディア: Kindle版
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現在進行形で読んでいる『その悩み、哲学者がすでに答えを出しています』ですが、メチャ面白いです。
「他人から認められたい」
「将来が不安」
「自分と他人を比べて落ち込んでしまう」
…など、我々が現代人特有の悩みだと思っていたことは大昔でもみんなが全く同じように悩んでいて、それは既に哲学者が答えを出していることを、この本から知ることができます。
ただ時代が進んで文明が発達しただけですからね。そもそもはいつの時代も同じ人間なんですから、悩むことが同じなのも納得です。
犬は今も昔も人間に寄り添って手助けしてくれますし、馬は今も昔も人を乗せて走りますし、ヘビは今も昔もネズミや鳥などの獲物を丸呑みします。
このことからも、生物というのは時代が進歩したとしても習性の大枠は変化しないことが分かります。
そう考えると、今の人間が大昔と同じ悩みを抱えているのも自然なことですよね。
生物の中では人間のみが「自由」である
さて、まだ半分くらいしか読めていない『その悩み、哲学者がすでに答えを出しています』ですが、すでに目からウロコな内容が盛りだくさんです。
中でも自分が衝撃を受けたのは、「生物の中では人間のみが『自由』である」という文章でした。
該当箇所を引用します。
たとえば 、とかげという動物がいます 。
とかげには 、 「とかげ 」という 「本質 」があります 。堅い鱗に覆われた爬虫類の一種で 、壁や天井にひっついて歩ける四肢を持ち 、昆虫などを捕食する 。長いしっぽをもち 、外敵に襲われればそのしっぽを自ら切る 。しっぽ自体が数分間うごいて敵の注意を引き 、その間に逃げる 。
そのような生きものであり 、自分に似た子孫を残すために生きているといった 、もろもろの属性がつまっている 。とかげはそういった属性を持つとかげ 、それ以外の何ものでもありません 。それらの属性のいろいろは 、とかげのかわらない 「本質 」だといえます 。
一方 、人間には 、本質というものがありません 。あっても 、およそどうでもいいものである 。大きな脳みそをそなえた肉体を与えられ 、個体差のある姿かたちを与えられてはいますが 、神によって 、あるいは親によって 、あらかじめ先天的に決められた 、その人の人生の意味や目的といったものが 、あるようで存在しない 。人間はもう 、徹底的に自由です 。途方に暮れるぐらい自由であり 、平日の夜中にいきなり旅に出るとか 、ほんとうに何をしたっていいのですけれど 、神も 、親も 、親友も ─ ─上司や会社はいうまでもなく ─ ─自分が何をすべきかは決めてくれない 。しなければいけないことも 、あるようで実は 、何もない 。
出典:その悩み、哲学者がすでに答えを出しています
うーん、本当にその通りなんですよねぇ。
人間は「鳥のように空を自由に飛んでみたい」「野生動物のように自由に生きたい」なんてかんがえたりしますが、実は自分たちしか自由じゃないんですよ。
トカゲを始め、人間以外の生物たちはそれぞれの属性を持ち、子孫を残すために今を精いっぱい生きる。それが「本質」であり、そこに選択の余地はありません。
成長の過程で巨大な大脳を持った人間のみが考える力を持ち、自由になったわけです。
考える力によって人生の意味や目的は多岐に渡り、子孫を残すことだけがそれではなくなりました。
人間は考える力を手に入れて、本来の「本質」を失ったことで「自由」になったんです。
世界一周旅行をしたり、仕事を辞めて好きなことに没頭したりなど、考えられることは何でもできますからね。これは他の生物に比べて圧倒的に「自由」と言えるでしょう。
ただ、人間は自由だからこそ自分の人生に悩み、将来を心配し、過去を悔やみます。
もし他の生物と同じように自由でなければ、働いてお金を稼ぎながらパートナーを見つけて子孫を残せば、役目は全うできますからね。
何の疑いもなく、悩みや心配や悔いもなく、敷かれたレールの上を歩けば良いだけです。
我々は「自由」になったことで色んなことができるようになりましたが、代わりに自分の本質は自分で見つけなくてはならなくなったんですよね。
最後に
人間として生まれた以上、自由からは逃げられないんです。
もしかしたら、本当に我々が求めているのは「自由」ではなく「不自由」なんじゃないでしょうか。
たとえば「好きなことで生きていく」という言葉なんかは、それがよく表れています。
要するに「好きなことだけで生きていける(稼げる)ようになりたい」ってことですからね。
「なんでもできる」のに「好きなことだけ」を求めるなんて、まさに『不自由』になろうとしているわけですから。
つまり、我々は『自由』と『不自由』の意味を逆に捉えているんですよね。
あぁ、なんて話していたらBUMP OF CHICKENの「RAY」に収録されている名曲『(please) forgive』が頭の中で流れ始めました。
ただ怖いだけなんだ 不自由じゃなくなるのが
守られていた事を 思い知らされるのが
(中略)
残酷な程自由だ 逃げようのない事実なんだ
震える手でその足で 全てを決めるんだ
絶え間無く叫んで あなたを見ていて
それを続けた心で あなたは選んだんだ
出典:BUMP OF CHICKEN『(please) forgive』
- アーティスト: BUMP OF CHICKEN
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